<心虚で進むアホポン化(5)>

試合の翌日、SPRING VALLEYを半ダース持って、丸善スポーツにでかけた。梅澤さんがビールを自分で買って飲むことはないので、アル中になる心配はない。このビールを飲むと脳の機能が上がり、3日ぐらい卓球が強くなる。昔は、社長にもビールを持って行っていたが、肝機能が低下してからは、社長の好きなコミックの単行本にした。『梅澤にはビールで僕にはコミックなのね』と言ったことがある。社長はM系なので、『あずみ』が一番喜ばれたようだ。

梅澤さんは、お店でも『点数は取れなかったけれど、今までとは全く違いました』と言った。そして『サーブだけでなく僕の打つ球に全て正しく反応した。ラケットの角度も全て正しかった』と付け加えた。僕は梅澤さんの動体視力の凄さに驚いた。インパクトの瞬間のラケットの角度を見ているのだ。

梅澤さんは、短期間に、なぜ、そんな変化が起るのか知りたいのだ。『サーブを横から見るときと、サーブを受ける時では全く違って見えるでしょう』と言うと、『確かにそうだけど』と梅澤さんは頷いた。『昨日は、突然、梅澤さんが打ったサーブが横から見た時と同じに見えたのです』と説明した。梅澤さんは、その説明で納得したらしく、時計を見るしぐさをした。アホポン化している僕はここでも外してしまい『時計を新しくしたのですか』と聞いた。『前からしているやつだけど』と梅澤さんは答えた。

2022/9/20